このこんが走る 一覧

農村生活研究第60巻第2号に事例報告が掲載されました

2016年10月に第64回日本農村生活研究大会公開シンポジウムでの報告が、学会誌に掲載されました。

内容を下記に転載しました。

一部未掲載の画像を加えてあります。

 

 

[事例報告]


農山漁村の起業活動から、農業の6次産業化へ
―民間と公共の2つの支援の立場を体験して―


河野 律子
有限会社河野経営研究所 中小企業診断士

From Women's Enterprises to Sixth Sector
Industrialization of Agriculture

Ritsuko KOHNO

[キーワード]
6次産業化 Sixth sector industrialization, 農村女性起業women's enterprises ,
事業計画business plan, 普及指導員 extension officers , 埼玉県 Saitama Prefecture


1.はじめに

中小企業診断士の資格で,1998年より経営コンサルタントとして事業に取り組んできたが,2012年8月より職を離れ,3年8か月任期付公務員として埼玉県に勤務した。構造改革特区として「農業の6次産業化普及活動人材活用特区」が認定され,民間の国家資格有資格者を普及指導員として任用するという全国初の取り組みであった。なお,本制度については,2015年12月18日「農業改良助長法施行令」が改正,全国展開となり,特区に拠らずに全国どこでも取り組むことが出来るようになった。


民間の経営コンサルタントとして多様な事業分野に対応してきたが,食品分野の支援については事業開始当初より取り組んできた。農業分野は2003年開催された「女性起業の『みんなおいでフェスタ』inさいたま」の実行委員となったことが本格的に関わるきっかけとなった。

 

農業分野においては,農山漁村の起業活動から農業の6次産業化といった農業の多角化と,企業的・組織的な農業経営を支援するメニューを提供してきた。

 

一方,「女性起業の『みんなおいでフェスタ』inさいたま」の実行委員会を継承した組織として,埼玉・コラボレーション・インスティテュートを設立し,2004~2012年,農業と商工サービス業の女性経営者の交流団体の代表として活動した(表1)。活動を通じて農業女性の前向きな取り組み姿勢と成長する能力の高さを感じ,地域を活かすために後輩を育てる姿を間近で見ることができた。

 

さらに,2009年3月,岡島副知事(当時)の発案により,埼玉県内の女性企業経営者と農業女性との交流を進めるための「埼玉県女性農商工連携推進会議」を開催し,ともに埼玉県が事務局を持つ,さいたま農村女性アドバイザーネットワーク「響」とサイタマ・レディース経営者クラブの交流を図った。

 

また,2009年に農商工連携等人材育成事業「全国商工会連合会」(経済産業省事業)コミュニティビジネス型農商工連携推進のためのプロジェクトマネジメント研修を先述した合同会社埼玉・コラボレーション・インスティテュートで受託し,さいたま農村女性アドバイザーネットワーク「響」1)とサイタマ・レディース経営者クラブ2)の共催で実施し,2010年に農商工連携等人材育成事業「全国商工会連合会」(経済産業省事業)農商工連携プロジェクトマネジメントケーススタディ,2011年に農商工連携人材育成事業「全国中小企業団体中央会」(経済産業省事業)農業分野の生産性向上のためのIT・IEプロジェクトマネジメント研修を(有)河野経営研究所で受託し実施した。

 

■ 参考 農商工連携人材育成事業の募集ちらし(学会誌には未掲載)


このような経験を経て,文頭の,埼玉県での職務に従事したが,経営コンサルタントという民間の支援者としての立場と,農業革新支援担当の普及指導員という公共の支援者としての立場を経験した中で,「女性」が主役であった農山漁村の起業活動が,「農業経営の多角化」を目的とした農業の6次産業化へと変化したとも考えられる状況における課題を考察したい。

 

■ 埼玉・コラボレーション・インスティテュートの活動について

2004年8月 埼玉・コラボレーション・インスティテュートという名称で任意団体として設立
2004年8月~
9月
第1回
事業をする女性と事業をする女性のであい広場
 マッチング・マーケティングセミナー+展示・交流イベント
2004年7月~
2005年2月
女性起業インターンシップモデル事業
(彩の国女性チャレンジ支援事業:埼玉県事業)
2004年10月~
11月
リーダー研修(内部)
 経営戦略と人間関係論に関する研修
2005年3月 第2回
事業をする女性と事業をする女性のであい広場
 税務・会計知識の習得
2005年7月

2006年2月
「まちづくり女性事業者参加プロジェクト」
(With Youさいたま女性チャレンジ支援事業:埼玉県事業)
 目白大学大西研究室との連携
 女性事業者対象に5回のセミナーの実施
2005年7月

2006年2月
「農業女性のためのとっても簡単パソコン講座」
 3回でパソコンの立ち上げ方からの基礎講座の実施
「農村女性起業のIT活用・プレゼン講座」
(With Youさいたま女性チャレンジ支援事業:埼玉県事業)
 6回でダイレクトメールやブログの作り方について学ぶ
「とっても簡単パソコン講座 年賀状作成・エクセル基礎」
 前2回の講座のフォローアップの実施
※ SCIの農村女性を中心とした「農村女性起業のIT活用研究会」主催
2005年7月

2006年2月
「中小企業育児休業取得中女性のための支援プログラム「ずっと働きつづけるために! 仕事も育児もどんとこいサロン」
(With Youさいたま女性チャレンジ支援事業:埼玉県事業)
 育児休業集中の女性を集め4回のセミナーとサロンの実施
2005年11月 東京ファーマーズマーケットに出店
2006年3月 第3回
事業をする女性と事業をする女性のであい広場
 であい広場(展示・交流イベント)
 セミナー 体験(みそづくり,おはぎづくり,フラワーアレンジメントなど)
2006年5月2日 合同会社として法人化
2006年11月~
12月
「効果的なちらしを作ろう」
 自分でちらしを作るときのPC技術を学ぶ
※ SCIと農村女性起業のIT活用研究会共催
2007年2月~
2009年3月
「LLC-SCI ∞ konocon マネジメントセミナー」
「LLC-SCI ∞ konocon マネジメントセミナー08」
「LLC-SCI ∞ konocon マネジメントセミナー09」
2008年3月・
12月
「埼玉発ビジネスフェスタ」1回 2回
埼玉県創業ベンチャー支援センター
埼玉中小企業家同友会女性経営者クラブファム
NPO法人ビブリと共催
2009年9月~
11月
「農商工連携等人材育成事業」 全国商工会連合会(経済産業省事業)
コミュニティビジネス型農商工連携推進のためのプロジェクトマネジメント研修
2010年2月 「ベンチャーフェアJapan2010」出展
2010年3月 「埼玉発ビジネスフェスタ」3回
2012年6月 合同会社解散



2.農業経営の多角化における課題

農業経営の多角化,すなわち,農業の6次産業化は,①農産物加工品の製造,②農産物や加工品の販売,③農作業の体験サービスの提供,④農産物加工の体験サービスの提供,⑤農家レストランでの食事の提供,⑥農家民宿での農業を体感できる宿泊サービスの提供という6つの事業分野を指す。


この6つの事業分野へと進出することは,新たな技術の習得,新たな市場への進出など,多様なノウハウの習得が必要である。例えば,食品加工はHACCPへの取り組みが必須となってきており,Webメディアの活用が不可欠であり,ホスピタリティの最低要件は上がっており,これらの状況にどのように対応するのかが求められている。


また,この取り組みを「だれが」行うのかによって,状況への対応が変わってくる。地域での活動母体がある場合,規模の大きな農業法人が取り組む場合,農業者一戸が取り組む場合など,経営主体の大きさと,取り組みの目的の多様性が「農山漁村の起業活動」が「農業の6次産業化」となることでより広がり,「何に取り組むのか」ということより,「どのように取り組むのか」の重要が高まり,目的を事業化するための経営の視点が不可欠となった。


さらに,激変する経済環境の中で,取り組もうとする経営体の「強み」と「差別化要因」が生かされていないと,利益を上げることのできない事業性の低いものになってしまう可能性がある。

3.目的を事業化するための事業計画

埼玉県在職時に,埼玉県独自の「農業の6次産業化事業計画書(経営ビジョンシート)」を公表し,作成を支援する事業を開始した(表2)。国の農業の6次産業化認定のための「総合化事業計画」の作成についても支援していたが,農業者自らが記入することにより「どのように取り組むのか」を明確にすることを目指した。また,普及指導員との情報の共有化により,継続的かつ効果的な支援を図ることも目的としている。さらにその手順と,フォームをWebページで公開している。


これにより,今後の目標を明確にするだけでなく,自ら考え,無駄のない投資により創業した事業者もあり,農業者自らの経営能力を底上げすることが可能となる仕組みであると考える。

 

 

■ 農業の6次産業化事業計画書(経営ビジョンシート)について


(ステップ1) 「農業の6次産業化事業計画書作成ガイド」に書き込んでみる。
 いきなり計画書に自分の「想い」を書いていくのは、難しいものです。
 そこで、まずはじめに「農業の6次産業化事業計画書作成ガイド」を開いてみましょう。
 それぞれの項目を埋めることで、だんだんとあなたの6次産業化への取組が形になってくるはずです。
  農業の6次産業化事業計画書作成ガイド(PDF:536KB)
(ステップ2) 農業の6次産業化事業計画書に転記する。
 次に、ステップ1で記入した「農業の6次産業化事業計画書作成ガイド」の内容を、「農業の6次産業化事業計画書」に転記します。
 転記するだけで、あなたの6次産業化への取組が形になります。
  (エクセル版)農業の6次産業化事業計画書(エクセル:141KB)
  (PDF版) 農業の6次産業化事業計画書(PDF:171KB)
(ステップ3)普及指導員と共有する。
 埼玉県では、各農林振興センターの普及指導員を中心に、皆さんの6次産業化の取組のお手伝いをしています。
 計画書を作成したら、必ず農林振興センターの職員にも計画を渡して、皆さんの「想い」を共有してください。
(ステップ4)やってみて、書き直す。
 計画は、あくまでも計画です。
 取り組んでみて初めてわかることが、たくさんあるはずです。
 新しい発見があった時には、必ず計画書を見直して、より実践的な計画になるように心がけましょう。
          埼玉県農林部農業ビジネス支援課Webページ
          農業の6次産業化について>農業の6次産業化事業計画書(経営ビジョンシート)
          https://www.pref.saitama.lg.jp/a0902/6jisangyoka/jigyoukeikakusho.html

4.普及指導員の役割

農業の6次産業化は,多くのリスクを伴うものであり,プランナー制度など専門家を活用することがすすめられている。今回特区制度が全国展開されたことも,専門的な支援の必要性が理解されたからということができる。


しかしながら,農業分野における支援の中心は普及指導員である。組織として,個人として長年にわたり課題に向き合っている。「どのように取り組むのか」について,継続した支援が可能である。


商工関係の支援機関の優秀なマネージャーが「実直で知識のある専門家に勉強してもらうのが中小企業にとってよい支援になる」と語った。普及指導員は支援者のみならず支援のコーディネーターとしての機能が求められている。多様な専門家との連携を図り,個別の経営体の実情に合った支援をすることが求められているのではないだろうか。


その際,他の成功事例よりも,その人(組織)に何ができるかということが重要な視点である。「してあげる」のではなく,「自分でできるようにするにはどうすればよいのか」を追求することが必要である。


1) さいたま農村女性アドバイザーとは,女性農業者の社会的役割の向上及び農業・農村における男女共同参画の推進を目的に,農業経営や地域社会に参画している女性農業者を,1993年度から「さいたま農村女性アドバイザー」として知事が認定している。認定要件は農業経営,生活経営に意欲的に携わり,農村生活や農業敬経営に優れた技術があり,地域リーダーとして指導・助言ができること等である。
ネットワーク「響」とは,県内の8農林林振興センター管内の10地区に,さいたま農村女性アドバイザーの会が組織されており,この10団体でネットワークを組織し「響」と称している。会の目的は会員相互の研鑽と親睦さらに,関係団体との連携を図り,女 性農業者の資質向上と社会参画を促進しようとするもの。


2) サイタマ・レディース経営者クラブは女性経営者・幹部を対象に埼玉県が実施した「レディース・トップ・スクール」(1986年~1988年)の修了生が,1987年に自主的に結成した,女性経営者の異業種交流グループ。業種は建設業,製造業,運輸業,卸売・小売業,サービス業等幅広い分野での女性経営者が所属しており,県レベルにおける女性経営者グループとしては,全国初。会の目的は,メンバーの資質向上,経営力の強化を図るとともに,地域産業の振興に貢献すること。


2017年06月04日

平成28年度6次産業化の分野に係る普及組織と民間等との情報交換会で発表します

平成28年度6次産業化の分野に係る普及組織と民間等との情報交換会で、「民間企業等からの発表」をします。弊社の発表テーマは、「農業の多角化を円滑に進めるための経営戦略支援について」です。


日時:平成29年3月17日金曜日10時00分から17時00分

場所:中央合同庁舎4号館12階会議室(住所:東京都千代田区霞が関3-1-1)

参集者:都道府県普及組織、民間企業等次第

(1)開会

(2)運営方法説明

(3)農林水産省食料産業局産業連携課の講演

(4)普及組織からの発表

(5)民間企業等からの発表(予定)

(6)個別情報交換発表終了後、団体ごとにブースを設けて情報交換を行います。

(7)閉会順番等は変更になる可能性があります。

詳しくは下記ページでご確認ください。

http://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/rokuji_sangyou_h28.html

2017年03月03日

第64回日本農村生活研究大会公開シンポジウムで報告します

第64回日本農村生活研究大会公開シンポジウムが2016年10月15・16日(土・日)に開催されます。

学会会員ではありませんが、報告者として登壇します。

『健康志向と農業の6次産業化』
コーディネーター:宮城 道子 氏(十文字学園女子大学)
報告者: 長尾 昭彦 氏(十文字学園女子大学)
尾崎 千恵子 氏(さいたま農村女性アドバイザー)
河野 律子 氏(有限会社河野経営研究所・中小企業診断士)
コメンテーター: 加藤 由実 氏(坂戸市環境産業部)

会場 十文字学園女子大学:埼玉県新座市菅沢2-1-28 9 号館4 階9417 教室
日時 15 日(土) 13:10~16:40
定員 200 名
参加費 公開シンポジウムのみの参加の場合は、無料です。

参加希望の方は、申込期限が10月3日(月)正午となっているそうです。
概要については下記ページを参考にWebより申し込みください。

日本農村生活学会
http://www.ruralife.org/

申込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/rurallife2016/1yaydfusw72i

2016年09月21日

生産革新フォーラム2016年8月度例会で

生産革新フォーラム2016年8月例会で、組織とマネジメントについて、話をします。
ファーストキャリアでお世話になった山崎製パン、この3月まで任期付職員として勤めさせていただいた埼玉県、私自身もそうですが仲間やお客様である中小企業、ここのところ係わりの深い農業、現場で感じた組織とマネジメントについて話させて頂きます。
生産革新フォーラムは、情報系の中小企業診断士が多い研究会ですが、資格がなくても参加されている方も多いですので、お時間があればご参加ください。なお、1回までなら会費は無料だそうです。

1.日 時:2016年8月17日(水) 18:30~

2.場 所:中央区堀留町区民館

3.内  容: 「組織文化とマネジメント 食品メーカーと行政と中小企業と農業と」

河野律子

2016年08月10日

河野重榮「日本マネジメント学会誌:経営教育研究」論文について

 前代表取締役河野重榮(獨協大学名誉教授)が、恩師である山城章先生の学説と遺業をまとめた論文「山城学説の展望とその後の展開」が掲載された日本マネジメント学会誌経営教育研究が発行されました。
 このこんが走るの投稿「TASK10号によせて」に記載した学会発表の内容を整理して、まとめたものです。
 山城章先生は著作が多いのですが、比較的発行年が古いものが参考文献となっています。これは、山城先生の先進性を示すためという考え方によるものです。
 そのため、古本でも入手が難しいものもあるようです。
 とはいうものの、戦後の物資が不足している時代に、あまりよくない紙に印刷された数冊の本は、活字や仮名が見にくいにもかかわらず、先生の感性の鋭さを示す本となっています。
 また、1964年にダイヤモンド社より発行された「経営正攻法」は新書サイズの本ではありますが、先生の学説の全体像が示された本だと思います。
 書籍の感想は、論文を手伝った私の意見ですが、グローバル化という名の下に忘れてしまった「日本的経営」の本質的な強さを再確認することができると思います。
 今回の論文は父のフィルターを通したものかもしれませんが、興味のある方は抜き刷りを送料をご負担いただければお譲りできますので、お問い合わせください。(10部のみ)

 メールにて、氏名(ふりがな)、連絡先(勤務先or自宅)郵便番号、住所、電話(緊急の連絡がつくもの)、所属orお仕事を明記ください。
narawanu.live(a)konocon.comまでお申込みください。
※(a)を@に変えて送付ください。
 送料の金額・振込先をお知らせします。振込確認後、送付させて頂きます。

2016年08月08日

TASK10号によせて

 前代表取締役であり、私の父河野重榮は、昭和31年から47年まで香川大学で教鞭をとっていました。
 その当時のゼミの卒業生の会「タスク会」が発行したタスク10号に、娘として文章を書かせて頂きました。
 9号の発行から時間が経っての10号でしたが、父が教鞭をとって60年、個人的なことですが両親が結婚して60年ということを記念しての発行でした。
 80歳を超えた会の会長の編集により形になりましたが、全編110ページにも及ぶ冊子になりました。私が生まれた時から知っている会長は、印刷業界におられた方で、年を重ねられてもプロフェッショナルとして仕事をされていたからこそという仕上がりになりました。
 なお、「タスク会」は、準備期間を経て、昭和50年から続いており、この6月11日に香川県高松市で41回目を迎えています。
 このタスク10号に書いた文章を、下記に転記したいと思います。

 

門前の娘ならわぬ経営学を語る

中小企業診断士 河野律子

はじめに


 タスク会の皆様とは、私が生まれた時をご存知の一期の方からはじまり、「大学生のお兄ちゃん」としておつきあい頂いてきています。
 「フォードの50年」を絵本に、ギルブレス夫妻の「1ダースなら安くなる」を中学時代の愛読書にし、妹とのしりとりに「テイラー」という言葉があったものの、オートメーションシステムも、動作経済の原則も、科学的管理法も知り得ないまま社会人を迎えました。
 父の仕事とは無関係だと考えていた不肖の娘が、いつの間にか父の学説を活用する仕事をすることになったことを、書いてみたいと思います。

1 現場で学んだ経営学

 私が、経営学の勉強を始めたのは、社会人一年生、食品メーカーでリテールサポートの仕事に着いたとき、上司に「新人でも、お客さんに必要とされる情報を提供することが出来たら、必ず認めてもらえる。」と言われたことがきっかけで、新聞や専門誌を読むことからスタートしました。
 30歳代の後半に人生の変化を迫られる事になりました。中小企業の嫁の立場を卒業し、子ども4人をひとりで育てる選択をしました。手続きに時間を取る中で、自分自身の仕事のため、ファーストキャリアの小さな成功体験に付加価値を付け再就職をすることを目指しました。
 父には無理だと言われましたが、仕事の延長線上として中小企業診断士の資格を取得しようと考えました。ただこのときにはまさか父の学問領域と関係ある選択をしているという意識はありませんでした。
 当時、キャリアのブランク、性別、年齢が、再就職の選択を難しくしていました。資格取得のために通っていた塾の先生に、教えてみないかと言われたことで、少しの希望の光が差したように感じ、業として中小企業診断士の仕事をしていくことを選択しました。
 学校の勉強はあまり得意ではなく、大学を卒業するまで、勉強にあまり関係のない本を読むことが専らでしたから、資格試験の勉強がはじめて勉強したと言えるものでした。さらに、塾の先生として教えるために、最初は商品知識、労務管理、経営法務、生産管理、ケーススタディと、資格試験以上の勉強の日々が、待っていました。
 一方で、資格は取りましたが、都合よく仕事が降ってくるわけではありません。ただ、最初の仕事で学んだことは、現場で現場の人の話を聞くことの大切さでした。そこで、異業種交流会にメンバーとして参加し、中小企業経営者との交流や、事業所や工場を訪問することで、現場感覚を得るようにしました。
 中小企業診断士の受験指導による知識の蓄積と、現場の経営者の考えとその双方で仕事の能力を上げてきましたが、父の学説の重要性について理解するにはさらに時間が必要でした。
 タスク会の皆様は、ゼミや実務で経験済みのことと思いますが、戦略の立案や見極めは、経営ビジョンを明確にし、SWOT分析を経て、事業領域を明確にし、経営資源をどう生かしていくかという戦略を組み立てます。
 この時に、道具として戦略分析ツールを活用します。アンゾフの成長ベクトルやポーターの競争構造の分析などはとても使いやすいツールです。先人の分析ツールを上手にこなすのが実務としての経営のアドバイスのノウハウでもあり、現場を理解するモノサシでもあります。
 仕事としてコンサルティング業務に取り組むなかで、説明するモノサシがあまり無い領域がありました 。それは、「企業が成長する時に、どのように機能が分化していくのかということ」と、「経営者がどのように意思決定しているのか」ということでした。
 ある時、まさにこの二点を解説していたのが父の学説だったことに気づきました。
 けれども、ご存知の通り、父の論文は無駄のなさすぎる組み立てで、説明が足りず、得意のノリとハサミを使うことができません。自分なりの解釈を加えないと使えないのです。ポーターのバリューチェーンを説明してある競争優位の戦略は、日本語訳で660ページもあり、理解の糸口に溢れています。それに比べ、父の論文での図の説明は半ページにも足りません。同居しているので、父の話を聞くことは度々ですが、その理念のもと、具体策は、自分では組み立てるしか無いのです。
 私なりの解釈ができはじめたのは、業として中小企業診断士の仕事をはじめて10年ほど経ってからでした。

2 日本マネジメント学会発表

 過日、父が山城章先生(父の恩師)の業績を正しく伝えたいと、日本マネジメント学会での発表することとなりました。山城先生は、時代を読むセンスの良さが強み、父は原点と現場を直視し追求するのが強み、なので、父は師を立てるのですが、山城先生の学説と父の学説との関連性を限られた時間で伝えるのは難しいことでした。
 そこで、父の学説を微力ながらも伝えようと考えて、埼玉県の任期付職員として取り組んでいた農業分野について学会発表を致しました。
 私は、この3月まで公務員として「農業の6次産業化」の仕事をしていました。この、農業経営の多角化に関する分野に、民間の立場と公共の立場で関わりその中で課題として捉えたことを、父の「マネジメントのフィードバックモデル」、「『経営―管理―作業』の機能分化と各職能との関係」の視点から整理しました。

【要旨】

 農業をめぐる環境変化は、個々の農業者のマネジメント能力の成熟を待たずに、大きく変わろうとしています。
 農業者の高齢化は、年齢の平均で語られることが多いですが、2010年世界農業センサス確報をみると、新たな農業への参入が進まず、年齢構成が2005年から2010年へと5年増加したのみであることをうかがい知ることができます。さらに、同センサスによれば、経営耕地面積5ha以上の経営体が、2005年43.3%であったものが、2010年51.4%へと増加し、農地の集積が進んでいます。さらに、農産物販売金額規模別農業経営体数の増加率は、2005年から2010年の比較で、1億円以上の経営体のみが増加しており、その増加率は9.5%にも上ります。
 発表時は、2015年のセンサスの結果が発表されていませんでしたが、速報では、上記の傾向はさらに進んでいます。
 農業者への支援を通じて、5年以上前から、「土地が集まりすぎている」という話を聞いてきました。ここにきて、「土地だけならいくらでも借りられるけれど」「やってほしいという話はたくさん持ち込まれるけど」という話が多くなっています。信頼ができるとなると、地域の農家から積極的な依頼が舞い込みます。また、統計に表れない耕作請負も多くなってきています。実態は、上記の情況がより進んでいます。

図表 1 マネジメントのフィードバックモデル(河野重榮、1992)



 農業者の技術的な優劣は、その収益を左右する大きな要素であり、「plan-do-see」のサイクル的関連は、個々の農業者の農業技術に合致した形で組み立てられ、農業経営の中心的な管理として実施されてきています。
 先に述べた農業の規模拡大は、家族経営から雇用を伴う組織経営へとの変化を促しています。農業の6次産業化をはじめとする農業関連事業への進出は既存の事業とは異なる市場へのアプローチ、新たな商品開発を伴うものへと変化してきています。このことは、戦略的な意思決定による経営判断を行う農業経営者が担い手として必要されていることを示します。
 戦略的意思決定を行い、他者との差別化を進めるためには「調査」において、経営規模拡大のためのベンチマーク、雇用と組織の課題の把握、生産技術の将来展望などの情報収集を進め、「開発」において、環境変化に対応できるビジネスモデルの創造、提供する商品の市場を明確にしたねらいの品質の明確化が不可欠です。
 しかしながら、自ら事業領域を決め込んで情報収集を限定してしまう、地域性の強い画一的な考え方を志向してしまう傾向が「調査」「開発」を阻害し、意思決定を保守的なものにしてしまい、個別の農業者のみならず、地域全体の成長を阻害しています。
 このとき、幅広い意思決定の参考となるケースを知ることが重要であり、利害関係者はもとより、同業者、さらには異業種へと地理的なことも含め、その範囲を広げることで、思考の多様性を広げることが可能となると考えます。

図表 2 「経営―管理―作業」の機能分化と各職能との関係(河野重榮、1994)



 さらに、家族経営という「経営―管理―作業」の機能分化がされていない状況から、経営規模拡大による組織経営へとその機能を分化させていく過程においては、職能構造を組み立てるという側面と、意思決定機能、調整・維持機能、作業機能の「持たせ方」を、自らの戦略に合わせて構築することが求められています。
 さて、二次、三次企業の戦略的農業参入は、拡大傾向にありますが、そういった外部からの刺激が意欲ある農業者の経営判断に影響を与えていることは否めません。また、地域での担い手として認識されている経営体も増加しています。
 しかしながら、農業者の持つ経営資源、すなわち、「家業として農業に取り組んできたことによる知恵の集積」「地縁」「経営資産である土地の所有」を、自身が戦略的に生かしていくことなしには、地域ひいては全国の、農業の維持、発展は難しいのではないでしょうか。
 特に、農業者の高齢化は、技能の継承、農地の保全などの課題が大きく、この課題の解決のためには、直接の後継者だけでなく、地域の担い手による戦略的な解決が待たれるところです。
 「農業の成長産業化」を実現化するには、戦略的意思決定を持つ農業者の絶対数の増加が不可欠です。
 そのために、経営学のできることは大きく、現場にとってよりよい解決策を提示できる支援者の役割の重要性も増してきていると思います。

2016年06月13日

「ならわぬ」とは、「習わぬ」と「倣わぬ」

「習わぬ」
地方自治も、農業も、経営学も、専門教育を受けたことがありません。
現場を歩く中で先達から教えて頂いたり、考えたり、調べたりしてきました。
子どもの頃から大学まで、習うのは苦手でした。

「倣わぬ」
人の真似をすることが苦手です。
隣の人のようにやって見なさいと言われてできたことがありません。
真似を見るのも苦手です。

具体的に説明しようと思いましたが、残念なことに、誤解を受けそうなことばかりです。

河野律子

2016年04月10日

3年8か月の埼玉県職員

中小企業診断士の資格を取得した1998年に弊社を設立し、法人として事業に取り組んで参りました。

経済産業省の農商工連携人材育成事業や埼玉県の研修事業などを企画提案・受託し、地域の問題解決に繋がる独自性の高い事業を取組んできたと自負してます。

2012年8月より職を離れ、3年8か月任期付公務員として埼玉県に勤務しました。

構造改革特区として「農業の6次産業化普及活動人材活用特区」が認定され、民間の国家資格有資格者を普及指導員として任用するという全国初の取組によるものでした。

農業分野には、設立当初より強い関心を持っており、2004~2013年まで(1年度除く)農産加工や農業の6次産業化に取り組む農業者に対する支援方法について、農林水産省都道府県普及指導員向け研修の講師として関わることをなどを契機として、先んじて農業の6次産業化の現場や地域活性化の現場に向き合って参りました。

さて、当初20か月の予定でしたが、計画が変更され任期が延長されました。当初、中小企業診断士(私)と管理栄養士の2名体制でしたが、農業分野における中小企業診断士の役割を認識して頂き、任期の延長後は中小企業診断士2名体制となりました。

さらに、2015年12月18日「農業改良助長法施行令」が改正、全国展開となり、特区に拠らずに全国どこでも取り組むことが出来るようになりました。

民間の国家資格有資格者の範囲も少しですが広がり、農業改良普及事業に取り組む人材の多様性が重要視されたのだと思います。

河野律子

2016年04月10日